渋沢栄一を主人公にした、NHKの大河ドラマ「青天を衝け」が、2021年2月から始まってますね。そして、渋沢栄一といえば、2024年に変わる新一万円札の肖像画になるんですよね。
あっ、ちょっと話が唐突でしたが、明治から昭和初頭にかけて活躍し「日本資本主義の父」などとも称され、生涯に約500もの企業に関わり、約600の教育機関・社会公共事業にも関わったという実業家・渋沢栄一は、小樽にもゆかりの建物が残っているなど、少なからず繋がりがある人物なんですよね。
ということで、その渋沢栄一ゆかりの建物について、今回はちょっと紹介してみようと思います。
北運河に建つ歴史的建造物の旧渋澤倉庫
渋沢栄一は小樽では倉庫業に投資していたようですが、まずはその名前を冠して、小樽市指定歴史的建造物にも指定されている、北運河沿いの北浜橋の前に建つ「旧渋澤倉庫」がよく知られていると思います(※ここでの渋澤倉庫の表記は、小樽市のサイト表記に合わせています)。
3つの倉庫が前後に連なったような形が印象的な、明治25年(1892年)頃に建てられた木骨石造の倉庫建築で、現在はプレスカフェ(PRESS CAFÉ)とライブ・シアター・小樽GOLDSTONE(ゴールドストーン)が入っています。
小樽市民には旧渋澤倉庫として馴染みのあるこの建物ですが、実は最初は遠藤又兵衛(富岡町の小樽警察署の上に小樽市指定歴史的建造物の「旧遠藤又兵衛邸」があります)が建てたものだそうで、渋澤倉庫(という会社名です)が小樽に進出した大正4年にこの建物を購入したそうです。
他にもある旧渋澤倉庫の表記のある建物
さて、その他に「渋澤倉庫」という文字をどこかで見たことがありませんか!?
実は、小樽観光の象徴でもある小樽運河沿いに、「渋澤倉庫」の文字を見ることができるんですよね。
先の北運河の旧渋澤倉庫には、建物に社名の表記はないのですが、小樽運河の浅草橋街園から見て右手に、旧渋澤倉庫の文字と、古い石造倉庫の壁面に見られる“印(しるし)”と呼ばれるマークが、はっきりと記された建物(倉庫)2棟が並んでいるんです。
散策路から見ると、こんな正面にあるんですよね。
ちなみに、昨年(2020年)夏から10月下旬にかけて、この建物に外壁工事が行われていて、現在はすっかりと綺麗になっています。
外壁工事前は、このような外観でした(2019年4月撮影)。
運河と反対側の通りから見ると、建物は現在、店舗や駐車場などになってますね。
以前のニュースによると(2019年4月11日付北海道新聞朝刊小樽・後志欄)、建物は現在も同社が所有しているとか(すいません、詳細は未確認です)。
そして、もう一箇所、あまり人目にはつかないかもしれませんが、先程、運河沿いの倉庫を見た浅草橋街園から、そのまま港方面に向かった、第2号埠頭の基部にも「渋澤倉庫」の表記を見ることができるんですよね。
ここに関してはも、現在どうなっているかなど詳しいことは分からないのですが、「渋澤倉庫」の表記と印がはっきりと見られますね。
渋澤倉庫は、小樽で数カ所に渡って倉庫を保有していたんですね。
第一国立銀行を前身とする旧第一銀行小樽支店
ゆかりの建物といえば、渋沢栄一は1873年(明治6年)に第一国立銀行を創業していますが、その第一国立銀行を前身とする旧第一銀行小樽支店の建物が、日銀通りと色内大通りの交差点の一角に今も建っていて、ゆかりの建物といえます。
1924年(大正13年)建築の旧第一銀行小樽支店は、小樽市指定歴史的建造物にも指定されていて、現在は紳士服の縫製加工を行なっている、(株)トップジェント・ファッション・コアの社屋として活用されています。
小樽来訪時に旧開陽亭(旧魁陽亭)に宿泊
直接のゆかりの建物ということではないのですが、渋沢栄一は1908年(明治41年)に初めて小樽に来訪していて、8月16日〜19日にかけて3泊したという記録があるそうですが、その時に宿泊したのが、老舗料亭だった開陽亭(旧魁陽亭)だったそうです。
小樽市内各所を精力的に視察したようで、夜には宴会もひらかれたそうですよ。
旧魁陽亭(名称は創業期の魁陽亭から開陽亭、そして海陽亭と変わっています)は、2015年に営業を停止していて、その後所有者が変わり、現在は、建物所有者と小樽商科大学との共同研究によって、保存と活用に向けて亭内に残る様々な資料の調査・整理などが進められています。
(2018年4月撮影。現在はチェーンがあって敷地に入れません)
その成果として、旧魁陽亭の150年に渡る歴史と遺産を紹介する冊子「旧魁陽亭-北海道を代表する老舗料亭-」が少し前に発行されたのですが、その中にも少しですが、渋沢栄一と開陽亭との関わりが記されています。
※参照:2019年4月25日付北海道新聞朝刊小樽・後志欄(新一万円札の渋沢栄一 明治末期に小樽訪問)
おわりに
ということで、大河ドラマに新しい1万円札にと、渋沢栄一という人物の再評価とともに、注目度も高まっていますが、小樽にも残っている、渋沢栄一ゆかりの建物を紹介してみました。
街歩きをしていて、改めてこれらの建物を見ると、ちょっと新鮮な気持ちで見ることができるかもしれませんね。
※参照サイト・ニュース・書籍
・小樽市指定歴史的建造物第20号【旧渋澤倉庫】 | 小樽市
・2019年4月11日付北海道新聞朝刊小樽・後志欄(新一万円札の渋沢栄一ゆかりの建物)
・新紙幣に採用、渋沢栄一と小樽 : ときどきの記 by 小樽の出版社“ウィルダネス”のブログ
・小樽チャンネルマガジン2020年10月号(vol.59)小樽れっけん「旧遠藤倉庫」
※総合博物館facebookページの参照投稿(澁澤倉庫についての投稿)
・小樽市総合博物館 - 投稿 | Facebook
・小樽市総合博物館 - 投稿 | Facebook
※参考
・公益財団法人 渋沢栄一記念財団
・渋沢栄一略歴|渋沢栄一|公益財団法人 渋沢栄一記念財団
・澁澤倉庫株式会社 東京都江東区。倉庫業の他、流通加工や国際一貫輸送など総合物流企業。
・紙幣刷新へ 1万円は渋沢栄一、5000円は津田梅子:日本経済新聞
・新1万円札「渋沢栄一」紙幣デザインを発表 5年後めど発行 | 注目記事 | NHK政治マガジン
・渋沢栄一 - Wikipedia
【補足:印(しるし)について】
小樽の古い石造倉庫の壁面には、“印(しるし)”と呼ばれるマークがよく見られますが、渋澤倉庫では、こちらの印が社名表記と一緒に記されていますね。
これは、和楽器の鼓を立てて置いた状態の形に見えることから「立鼓(りゅうご・りうご」と呼ばれるものに、横棒の帯が入っていることから「オビリウゴ」とも呼ばれたものらしいです。
※印について参照
・「小樽散歩案内」(発行:有限会社ウィルダネス)
・澁澤倉庫株式会社 創業者の精神
・建物に掲げられた商人の証"印(しるし)" | 小樽市
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