北海製罐小樽工場第3倉庫は小樽市に無償譲渡に〜ひとまず解体は回避(この1年の動きを書き留めておきます)
老朽化により、2020年秋に解体検討のニュースが流れ、その後、保全・活用に向けて検討が進められていた北海製罐小樽工場第3倉庫は、北海製罐が小樽市に土地・建物を無償譲渡することに決まりました。
さらには、北海製罐から当面の保全費として、市に1,000万円の寄付もあり、その贈呈式が2021年12月22日に行われたというニュースもありました。
所有権はすでに2021年12月17日に市へと移っているとのことで、これでひとまず小樽市指定歴史的建造物でもある北海製罐小樽工場第3倉庫は、解体という事態は回避されました。
このブログでもその動向に注目が大きかったこの件について、昨年秋からのこの一年の動きをここで書き留めておこうと思います。
解体検討のニュースに衝撃が走る(2020年10月)
北海製罐の第3倉庫は大正13年(1924年)建築の鉄筋コンクリート4階建で、小樽市指定歴史的建造物にも指定されている、北運河入り口のランドマーク的な建物で、運河のこの一帯のシンボル的な建物でもあります。
ただ、激しい老朽化(海側の壁が崩れてきているとのこと)に加えて、コロナ禍による北海製罐の業績悪化もあって、2020年10月に、北海製罐が年度内に解体が検討しているというニュースが流れ、各所に大きな衝撃と動揺が走りました。
すぐに迫市長が北海製罐側と意見交換を行い、解体方針を翌2021年10月まで1年間先送りにすることになりました(まずはこの決定に北海製罐に感謝ですね)。
ここから、保全・活用に向けて検討が進められることになります。
第3倉庫活用ミーティング発足・活動(2021年1月〜)
さっそく保全・活用に向けて、小樽商工会議所と小樽観光協会が主体となった民間組織「第3倉庫活用ミーティング」が、年が明けた2021年1月14日に発足しました。座長は小樽の建築物の権威、北海道職業能力開発大学校・駒木定正特別顧問。
それに先だち、解体のニュース後すぐに、若者有志が「第3倉庫の次世代活用を考える若者ネットワーク Non-.」(ノン)を立ち上げ、倉庫の新たな活用策などをFacebookなどで発信するという市民の動きもありました。
第3倉庫活用ミーティングでは、何度も議論を重ね、周知のための様々なイベントも開催されました。
私もいくつか参加しましたが、多くの参加者があった第3倉庫の見学会、オープン勉強会、ライトアップイベントや関連する絵画の展示会などがありました。最後に延期となっていたシンポジウム「これまでの100年からこれからの100年へ」(10月17日)も開催されました。
第3倉庫活用ミーティング最終報告(2021年9月27日)
第3倉庫活用ミーティングから2021年9月27日、市に最終報告がされます(保全・活用策等をまとめた提言書を提出。提言書はA4・28ページ)。活用コンセプトは〜「これまでの100年」から「これからの100年」へ〜。
※第3倉庫活用ミーティングが小樽市への提言を行いました | 小樽商工会議所
※【提言書概要版】(pdf)
※【提言書本書】(pdf)
提言書によると、当面の間、小樽市による土地・建物の所有と、国の登録有形文化財への登録の検討を求めた上で、保全・活用計画を2つのフェーズに分け、4年間程度(2025年度まで)を第1フェーズ「スタート期間」として運営体制づくりや建物補修、ブランディングなどを行い、2026年度からの20年間程度を第2フェーズ「本格的活用期間」としています。
報告では、第3倉庫活用ミーティングが実施した劣化調査で、コンクリートや鉄筋の健全性が確認されています(もちろん、外壁の劣化や外階段の腐食など危険な箇所もあるため、補修・整備は必要です)。
建物自体もとても価値のあるものですが、それに加えて、小樽のまちづくりにおける第3倉庫の重要性や、市民を中心とする活動の場としての位置づけなどが報告されました。
※参照ニュース
・北海製罐小樽工場第3倉庫 活用ミーティング最終報告会(小樽ジャーナル)
・2021年9月24日・28日付北海道新聞朝刊小樽・後志欄
・事例から学ぶ 小樽第3倉庫保全・活用シンポジウム(小樽ジャーナル)
市が無償譲渡を北海製罐に申し入れ(2021年10月18日)
第3倉庫活用ミーティングからの当面の間、小樽市が土地・建物の所有するべきという提案もあり、市は10月18日、北海製罐株式会社に小樽工場第3倉庫の土地・建物の無償譲渡を申し入れました。同時に維持・補修費の支援も要請しています。
※市が無償譲渡を北海製罐に申し入れる方針は、8月27日にすでに明らかにされていて、北海製罐側も理解を示しているという報道もありました。
“当面の間”という市の所有期間については、迫市長からは、一時的ではなく、市が責任を持って所有する意向も示されています。
※第3倉庫活用ミーティングは、いったん解散となってます。
※参照ニュース
・2021年8月28・29日付北海道新聞朝刊(解体回避へ市が無償譲渡申し入れへ)
・2021年9月28日付北海道新聞朝刊小樽・後志欄(今後の活用案 所有は市が責任持って)
・2021年10月19日付北海道新聞朝刊総合欄(市が第3倉庫の譲渡申し入れ)
・北海製罐小樽第3倉庫 無償譲渡依頼へ(小樽ジャーナル)
北海製罐が土地・建物を無償譲渡(2021年10月28日)
北海製罐が10月28日に、解体を検討していた第3倉庫について、小樽市からの土地・建物の無償譲渡の申し入れを受け入れることを決めます。
これで、猶予期限の10月末を前に、解体についてはひとまず回避されることになりました。また、保全のための1,000万円を市に寄付することも決定されました。
北海製罐側が、独断で解体してもやむを得ないところを、早い段階で市や小樽商工会議所に打診してくださり、こういった方向に進んでくれたのは、市民としても嬉しい限りで、北海製罐に感謝ですね。
※参照ニュース
・北海製罐小樽工場第3倉庫 無償譲渡へ(小樽ジャーナル)
・2021年10月28日付北海道新聞夕刊
・2021年10月29日付北海道新聞朝刊小樽・後志欄、第4社会欄
おわりに(2021年12月現在)
そして、冒頭の通り、1,000万円の寄付の贈呈式が2021年12月22日に行われ、すでに北海製罐小樽工場第3倉庫の所有権も小樽市に移りました。今は公共施設です。
これによって、昨年秋からの解体に関する問題については一区切りとなりますが、現在、第3号ふ頭周辺の再開発も行われようとしていますので、一帯の景観を維持しつつ、この歴史ある大きな建物を具体的にどのように保全・活用していくのかは、これからがスタートで、これからが本番ですね。
※参照ニュース
・2021年12月23・24日付北海道新聞朝刊小樽・後志欄
・北海製罐小樽第3倉庫 保存活用のための寄附贈呈式(小樽ジャーナル)
※第3倉庫活用ミーティング | Facebook
※小樽商工会議所 | 小樽商工会議所|公式ホームページ
【関連記事】
・北海製罐小樽工場第3倉庫の建物内部の様子〜第3倉庫見学会&オープン勉強会に参加してきました(3月20日)
・北海製罐小樽工場第3倉庫4階デッキからの風景(3月20日)【動画あり】
・北海製罐小樽工場第3倉庫が5月3日~5日の期間でライトアップを実施
・北海製罐小樽工場第3倉庫のVR映像が公開されていて、倉庫内をバーチャル探索できます
・UNGA↑2階ギャラリーで「絵画で観る北海製罐第3倉庫」展開催(6月22日~6月26日)
・北海製罐株式会社小樽工場(旧北海製罐倉庫)の歴史的建造物4棟について(事務所・工場・旧第2倉庫・第3倉庫)
※以下は解体関連のニュース(古い順から)
・ニュースより/北海製罐小樽工場第3倉庫の保全・活用に向けた民間組織「第3倉庫活用ミーティング」が発足
・ニュースより/解体が検討されている北海製罐小樽工場第3倉庫の保全・活用に向けて民間組織が発足
・ニュースより/北海製罐小樽工場第3倉庫の解体は1年間の猶予・多喜二祭実行委が要望書提出・若者たちも保存活用に動き出す
・ニュースより/北海製罐小樽工場第3倉庫が老朽化で解体を検討
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