【レポート】オタモイ地蔵尊の現地調査に同行しました【注意】現地は立ち入り禁止です〜維持管理について移設を含めた今後の対応が急務
2024年10月2日、小樽商科大学客員研究員の高野宏康先生によるオタモイ海岸にあるオタモイ地蔵尊の現地調査に同行させていただきました。
オタモイ海岸といえば、その美しい景観でも知られていますが、現在は海岸への遊歩道は土砂崩れ・落石により2006年(平成18年)から通行禁止で、オタモイ地蔵尊などがある海岸一帯は立ち入り禁止となっています。
なので今回、一般では訪れることのできないオタモイ地蔵尊の現地調査が行われるということで、高野先生にお願いして同行させていただきました。
高野先生は周辺の地蔵尊と合わせて、ここオタモイ地蔵尊についての研究を続けているんですよね。
当記事では、オタモイ地蔵尊の現状等と現地調査の様子をレポートしたいと思います。
※とても長い記事になっているので、トップページでは《続きを読む》という形にしてます。
オタモイ地蔵尊についてとその現状
今回の調査目的となっているオタモイ地蔵尊は、江戸時代末期、北前船の遭難犠牲者供養のために建立され、明治中期以降は子宝地蔵として全国から絶大な信仰を集めていたということなんですね。
そのことについては、現在はあまり広くは知られていないかもしれませんが、その歴史的価値が近年注目されているんですよね。
オタモイ地蔵尊の維持管理については、以前から現地に住まわれていた堂守の故村上洋一さんによって行われていて(代々村上家によって守られてきたんですね)、オタモイ海岸が立ち入り禁止になった以降も村上さんによって守られていました。
しかし、2022年に村上さんが亡くなり、以降は管理者が不在となり、その維持管理が課題となっています。
特に冬の雪の影響などでオタモイ地蔵尊が安置される地蔵堂の痛みが激しく、あと何年もつかといった状況になっているそうで、移設を含めた今後の対応が急務となっているんですね。
そこで、その状況を確認して今後の保存活用について検討するため、高野先生によって現地調査が何度か行われています。
オタモイ地蔵尊現地調査の様子
それでは、現地調査当日の様子を写真中心に見ていきますね。
オタモイ海岸のすぐ近くにあるオタモイ地蔵尊に行くには、先述の通りオタモイの駐車場からの遊歩道は通行禁止のため、現地へはオタモイ地蔵の裏にあたる山道を下って向かうことになります。
案内役となる高野先生がいなければ迷子になりそうな、ほぼ道なき道に入り山道を下っていくと、しばらくしてオタモイ海岸が木々の間から見えてきます。ちょっと感激です。
草木をかき分けもくもくと歩くこと30分ほどでしょうか。ようやくオタモイ地蔵尊を安置する地蔵堂のある開けた場所に到着です。
下ってきた山道を振り返ると、周囲の断崖に目を奪われるほどですが、とても急な斜面を下ってきたことがよく分かります。そして、やはりここも崩落の危険があるとのことなんですね。
少し広場になっているこの一帯ですが、大きめの建物はもうかなり朽ちていて、壁も壊れていますが、ここが村上さんが暮らしていた建物です。
実は私は子供の頃に海水浴などでよくここを訪れていて、ここは海の家のようにも使われていたと記憶しています。
そして、こちらが今回の主目的となる、オタモイ地蔵尊を安置する地蔵堂です。ここについては、次で詳しく紹介します。
オタモイ地蔵尊を安置する地蔵堂の様子(詳細)
ここからは、オタモイ地蔵尊を安置する地蔵堂の様子を詳しく見ていきますね。
地蔵堂の建物は、なんとか大丈夫なようですが、確かに痛んでますね。
こんなにたくさんのお地蔵さんが安置されていたのですね。ここには子供の頃から訪れていましたが、知りませんでした。
実際の数は分からないのですが、一説には約3000体あるとか(そんなにないかもしれません)。
そして、これらのお地蔵さんをどうするか…、それが問題です。
建物もこのまま放置していたらそう長くは持たないでしょうから、やはり早急に対策が必要ですよね。山道を整備してここに来やすくして管理するのか、やはり移設を検討するのがいいのか…
そうそう、別の建物内にもまだたくさんのお地蔵さんがいましたよ。
オタモイ海岸に下りてみた
さて、オタモイといえば、海が綺麗なことでも知られていますが、海岸に対して地蔵堂などがある場所は少しだけ高い位置にあるんですよね。
で、海岸に下りてみようということになって、以前はすんなりと海岸に出られたと思ったのですが、どうやら海岸に下りる道が正面にはなくて、ぐるっと迂回して、さらにはそこに設置されていたちょっとした縄梯子で海岸に下りることができました。
先ほどもちょっと触れましたが、個人的には昔よくきたオタモイ海岸ですが、ここに来るのは実に二十数年ぶりでした。海岸に向かって立つと、なんだかちょっと感傷に浸ってしまいました。
それにしても、振り返ってみると本当に背後にそびえる崖はすごいですね。
そして、こちらの中腹にかつてオタモイ遊園地の龍宮閣があったんですね。
ちょっと触れるのが遅れましたが、オタモイ海岸といえば、昭和初期に道内有数の観光施設として人気があったという「オタモイ遊園地」があったことでも知られていますよね。
その代表的な施設が料亭「龍宮閣」で、それがあそこに建っていたんですね。すごいですよね。
もともとオタモイ地蔵尊に多くの参拝客が訪れていて、すでに観光地のようになっていたのが、ここにオタモイ遊園地ができた要因ともいわれているそうですよ。
龍宮閣が昭和27年に焼失し、その後にオタモイ遊園地は閉鎖し、今となってはこの地にそのような遊園地があったということ自体が、まるで幻のように語られています。
その龍宮閣などがあった場所に、現在通行禁止の遊歩道が通っていて、かつてはその途中の断崖絶壁から美しいオタモイ海岸を眺めることができたんですよね。
オタモイ海岸の以前、私が訪れた際の写真があったので、掲載しますね。
オタモイ海岸は美しいですね。
オタモイ地蔵尊例祭について
オタモイ地蔵尊例祭が、昨年(2023年)、今年(2024年)と6月にオタモイの駐車場の広場で行われています。
オタモイ地蔵尊へは立ち入り禁止で行くことができないので、駐車場に臨時祭壇を設けての開催となっています。
コロナ禍前の2019年までは6月と9月の2回、堂守によって例祭が開かれていたそうで、コロナ禍で中断していた例祭を高野先生やオタモイ地区の住民、塩谷桃内まちづくり推進委員会らが2023年に4年ぶりに開催したんですね。
補足
・第5回塩谷桃内まちづくり講演会
第5回塩谷桃内まちづくり講演会が、2024年10月13日(日)に桃内町内会館で開催されました。
そこでは高野先生による講演があり、北前船と地蔵信仰について、オタモイ地蔵と「忍路高島七地蔵」を中心に、その歴史と移転問題などの状況のお話がありました。
オタモイ地蔵については、今回の現地調査を受けてのお話となっていました。
そのほか、民衆史研究家の石川圭子さんによる小樽の遊郭史についてのお話と、中川めぐみさんによる紙芝居「オタモイの地蔵さん」の上演もありました。
・オタモイ遊園地跡の再開発
今回のオタモイ地蔵尊の保存・移設問題とは別に、観光スポットとしてオタモイ遊園地跡の再開発の話が市や小樽商工会議所を中心に進んでいます。
展望施設やジップラインといった建設計画が報告されていますが、資金面はもちろんのこと、まだまだ課題は多いようです。
オタモイ海岸のこの美しさはぜひ多くの方に見てもらいたいとは思うのですが、この素晴らしい景観のオタモイが、オタモイらしいままで整備されていくといいなと、そして、そこにオタモイ地蔵尊があるとなおいいのになと、難しいこととは思いますが、勝手ながら個人的にはそんなふうに思ってしまいます。
おわりに
今回のオタモイ地蔵尊の現地調査の参加者は全部で10名。当日は雲空で時折雨も降ったりしたのですが、無事実施されてよかったです。
まずは、同行させていただいた高野先生に深く感謝です。どうもありがとうございました。
個人的な話なのですが、子供の頃からオタモイ海岸へは、親によく連れて行ってもらっていて、とても思い出のある場所でもあるんです。ただ、通行止めになって以来、もちろん海岸へは行ったことがなくで、今回は個人的にも感慨深いもののある調査同行となりました。
オタモイ地蔵尊について、山道を整備して、現地に参拝できるようになれば一番いいのかもしれませんが、現状を見ると現地の危険な地理的な面も含めこの地で維持保存というのは難しそうで、では移設ということになると、それはそれで例えば海岸から運ぶにしても、地蔵堂からどのように運ぶかなど、資金的な面も含めて検討課題は多いようです。
この歴史的にも貴重なオタモイ地蔵尊の存在を多くの方に知ってもらい、今後の維持管理に向けて、いい方向に進むことを切に願っています。
※オタモイ海岸オタモイ地蔵尊までの遊歩道の立入禁止について | 小樽市
※今回の配布していただいた資料も参照しています。
※関連ニュース:2024年10月8日付読売新聞
※参考ニュース
・2024年7月17日付北海道新聞朝刊小樽・後志欄(オタモイ遊園地跡再開発新協議会設立へ)
・北海道:断崖の地蔵堂存亡危機 小樽・オタモイ観光の原点 管理者不在1年以上:地域ニュース : 読売新聞(全国から信仰を集めた小樽の「子宝地蔵」、存亡の危機…断崖中腹で堂守も不在 : 読売新聞)
・2024年5月17日付北海道新聞朝刊小樽・後志欄(傷みが進むオタモイ地蔵尊)
・2024年4月12日付北海道新聞朝刊小樽・後志欄(1950〜70年代のオタモイの写真が見つかる)
・2024年1月30・31日付北海道新聞朝刊小樽・後志欄(どうなるオタモイ地蔵尊 上・下)
【関連記事】
・令和6年度オタモイ地蔵尊例祭が6月22日にオタモイの駐車場の広場で開催されました〜地蔵堂の維持管理が今後の課題
・霧が立ち込めたオタモイ海岸が幻想的だった(オタモイの駐車場から)
・ニュースより/「オタモイ遊園地」跡の再開発の可能性を検討する小樽商工会議所が初の現地視察
・夕日に染まるオタモイ海岸を眺めてきました
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コメント
こんばんは
私も子どものころ海水浴に連れて行ってもらいました。たしか途中までバスが来ていてどのように海岸まで行ったのか記憶にありません。
オタモイ地蔵があったことも記憶にありませんがきれいな海岸だった記憶だけはあります。又夕日がきれいと言われていますよね。
投稿: わかめ | 2024年11月22日 (金) 02時53分
わかめさん、こんばんは。
わかめさんも子供の頃に、オタモイに海水浴に行かれていたのですね。
バスが海岸近くまで降りてきていた、という話は聞いたことがありますが、すいません、詳しくは分かりません。
海岸近くに広い駐車場があって、車だとそこから歩いて海岸に降りてました。
オタモイ海岸は本当に綺麗なんですよね。
あっ、夕日も綺麗ですね!!
上記本文最後の【関連記事】のリンク「夕日に染まるオタモイ海岸を眺めてきました」で、ちょっとだけ夕日の写真を掲載してますので、よければどうぞ。
投稿: 小梅太郎 | 2024年11月22日 (金) 18時21分