有幌町に今も残る福井の北前船主による石造倉庫「旧中村倉庫」
観光客で賑わうメルヘン交差点から、その先の臨港線との交差点まで行くと、交差点の右奥に大きな石造倉庫が建っています。
これは、福井出身の北前船主・中村三之丞によって、明治28年(1895年)に建てられた、歴史的建造物の旧中村倉庫です。
旧中村倉庫については、これまであまり詳しく紹介された資料を見つけることができなかったのですが、「小樽チャンネルマガジン」(株式会社K2)2018年7月号(Vol.32)の小樽商科大学によるシリーズ“小樽れっけん”にて、旧中村倉庫(有幌8号倉庫)が特集されていて、詳しく知ることができました。
そもそも旧中村倉庫の建つ有幌町は、かつてはたくさんの石造倉庫が建ち並んでいたのですが、昭和40年代後半に、小樽運河の埋め立てを含む道路(臨港線)の建設事業によって、まず有幌町にあった石造倉庫が次々と解体されていったんですよね(これに危機感を持った一部の市民が立ち上がり、小樽運河の埋立反対、保存運動が起こることになります)。
で、小樽チャンネルマガジンの“小樽れっけん”の記事によると、有幌町に残る数少ない石造倉庫のうちの1つがこの旧中村倉庫で、これは有幌地区に多数あった中村家の倉庫のうちの8号倉庫とのことです。
※以下も“小樽れっけん”の記事によります。
この8号倉庫の南側(奥隣)は木造の7号倉庫になるそうで、現在駐車場になっている北側には9号倉庫が残っていたものの、平成19年(2007年)4月の火事で焼失してしまいます。
その火事で8号倉庫の北側の壁面も焼失して、その後、補修されたので、現在の綺麗な壁面になっているんですね。
上に見える印、井桁三紋は、中村家の持ち船の旗印で、通用印でもあるそうです。
平成22年(2010年)には屋根瓦を撤去して、現在の鉄板屋根への改装工事も行われています。
旧中村倉庫は、現在も倉庫として使用されているとのことです。
ところで、旧中村倉庫の脇の通りに入っていくこと、短いながらもこの通り沿いには、今もいくつかの石造倉庫が静かに建っています。
これらの倉庫も現在も現役で倉庫や店舗として利用されているようで、通りを歩くとひっそりとしていて、すぐ近くの賑やかなメルヘン交差点とは全く別の空間です。
この風景は、かつての様子をわずかながらも今に伝えているようですね。
ちなみに、この石造倉庫の残る静かな通りを抜けると、西松屋やオートバックスといった店舗が集まる広いスペースに出るという位置関係です。
実は、「小樽チャンネルマガジン」2019年4月号(Vol.41)にて、連載中の町を“歩く”シリーズで、有幌町を歩いているので、よければ読んでみてください。
※バックナンバーはこちら:小樽のフリーペーパー「小樽チャンネルマガジン」 | 小樽チャンネル
ということで、旧中村倉庫は、視界に入りやすい北側の開けた壁面が補修されて新しいため、あまり歴史的建造物としての趣がなく、そのせいか建物について語られることが少ないのですが、有幌地区という、かつての倉庫街という風景が大きく失われた地区に残る石造倉庫としてもとても興味深くて、歴史的建造物としてもっと知られてもいい建物のような気がします。
※参照:「小樽チャンネルマガジン」(株式会社K2)2018年7月号(Vol.32)の“小樽れっけん”旧中村倉庫(有幌8号倉庫)
【関連記事】
・有幌町の細い道路に石造倉庫が続く風景〜入口の大きな建物は旧中村倉庫!? ・小樽商大による冊子「小樽れっけん 小樽の歴史的建造物ものがたり」がとても詳しく興味深い!!
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