運河公園に建つ2つの銅像は、小樽港の近代化に深く関わりのある廣井勇と伊藤長右衛門
北運河の端には、国指定重要文化財の旧日本郵船(株)小樽支店の重厚な建物が正面に建つ運河公園があります。
この運河公園には、小樽港の近代化に深く関わりのある、2人の土木技術者の銅像が建ってるんですよね。
ひとりは小樽港の生みの親と言われる廣井勇(いさみ)、もうひとりは小樽港の育ての親といわれる伊藤長右衛門です(参考:「おたる案内人テキストブック」小樽観光大学校運営委員会編)。
普通ですと、その銅像が誰なのか、立ち止まって名前やその功績などについて書かれた説明書きを読む、ということまではしないかもしれませんが、銅像になっているくらいですから、小樽にとってとても大きな貢献をされた方々なんですよね。
ということで、今回はその銅像の2人について、ちょっと調べてみました。
※写真は3月31日と4月14日撮影分が混在していて、3月撮影分にはまだ雪が残っているのでご了承を。
廣井勇と北防波堤
小樽運河側から運河公園に入ると建っているのが、廣井勇の銅像です。
明治期に小樽港は近代化に向けて、大掛かりな港湾建設工事が行われました。
現在、小樽港には手宮側から北防波堤が伸びていますが、第一期工事としてこの北防波堤を建設したのが、初代小樽築港事務所長で「港湾工学の父」とも呼ばれる廣井勇です。
第一期工事は明治30年(1897年)に着工し、11年の歳月をかけて明治41年(1908年)に全長1,289mの北防波堤が完成します。
北防波堤の建設に関しては、コンクリートに火山灰を混入して強度を増す方式を考案したり、造られたコンクリートブロックを斜めに積んで安定させる工法を採用したといった点が特筆されてます。
銅像の横に説明文が書かれているので、その内容を引用させていただきます。
1862(文久2)年高知生まれ。
札幌農学校第2期生。アメリカ、ドイツで橋梁工学・土木工学を学び、帰国後、札幌農学校工学科教授。のち北海道の港湾改良と築港工事に携わる。
彼の指導による小樽築港第一期工事は、日本の近代港湾建設技術を確立し、世界に高く評価された。
また、明治後期、小樽港を運河にするか埠頭にするかでもめた際、廣井勇の“艀を利用した運河式の方が便利”という発言が、のちの小樽運河建設決定に大きな影響を与えたという話からも、その影響力の大きさが伺えます。
※北防波堤は手宮緑化植物園(4月29日から開園)からよく見えますね。
伊藤長右衛門と南防波堤
運河公園内に建つ石造倉庫「旧日本石油(株)倉庫」の横に建つのが、伊藤長右衛門の銅像です。
廣井勇による小樽港の第一期工事に続き、第二期工事で南防波堤の建設を指揮したのが、廣井勇の弟子でもあるこの伊藤長右衛門です。
第二期工事は、第一期工事が終わってすぐに始まり、大正10年(1921年)に南防波堤が完成します。
伊藤長右衛門が指揮した第二期工事の特徴としてよく知られているのが、ケーソンと呼ばれる大きなコンクリートの箱型の構造物を、所定の場所で水中に沈めて防波堤を作っていく工法です。
南防波堤は築港の平磯岬の近くから伸びていますが、その近くには製作したケーソンを海上に進水させる、斜路式ケーソン製作ヤードというのが今もあります。
ただ、コンクリート製ケーソン製造のための資材を運ぶために、昭和10年(1935年)に作られた大きなクレーン2基は、昨年、撤去されてしまいました(→小樽築港の斜路式ケーソン製作ヤードの歴史のある巨大なクレーン2基が解体撤去されてます)。
(このクレーンはもうありあせん)
伊藤長右衛門の銅像の横にも説明文があるので、その内容も引用させてもらいます。
1875(明治8)年福井生まれ。
東京帝国大学で、のち日本近代港湾建設の父といわれた廣井勇に師事。卒業後、廣井の跡を継いで第2代小樽築港事務所長に就任し、第二期工事に携わる。
彼が考案した新しい技術は、その後の各地の築港工事の模範となった。
おわりに
ということで、運河公園に建つ銅像の2人、廣井勇と伊藤長右衛門について調べてみました。
こうやって、防波堤に守られた現在の小樽港が造られたのですね。
今回は、ちょっと難しくて、調べるのにも手間取ったのですが、小樽は港にも歴史があって、興味深いですね。
※参考
・「おたる案内人テキストブック」小樽観光大学校運営委員会編
・小樽散歩案内(発行:有限会社ウィルダネス)
・広井勇 - Wikipedia
・伊藤長右衛門 - Wikipedia
【関連記事】
・小樽港の南防波堤周辺の様子と巨大なクレーン
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