先日(2015年11月14日)放送された「ブラタモリ」の小樽編。
「#23 小樽 ~観光地・小樽発展の秘密は『衰退』にあり?~」
その放送後に、私・小梅太郎がタモリさんの足跡を辿ってきた様子を紹介する記事の後編です。
前編はこちら→ブラタモリ小樽〜タモリさんの足跡を辿る【前編】《オープニングの小樽運河〜メルヘン交差点〜石造倉庫〜坂の上の高級住宅街》
観光地・小樽発展の秘密はなんだったのか、番組を思い出しつつ、小樽を楽しんでもらえたら嬉しいです。
※参考:#23 小樽 観光地・小樽発展の秘密は『衰退』にあり? | タモリのブラブラ足跡マップ | ブラタモリ - NHK
※過去に詳細記事を書いている場所などについては、リンクを貼っているので、参考にしてください。
小樽の町づくり〜水天宮の参道
前編では、明治時代に商業都市へと急激に発展した小樽を象徴する痕跡として、坂の上の高級住宅街まで辿っていきましたが、人口も爆発的に増えてきた小樽は、その発展についていくための町づくり、住宅の問題を抱えることになります。
ここで、もう一人の案内人、北海道大学名誉教授(地質学)の松枝大治先生が登場しました。
小樽の発展を地形や地質から見ていくということです。
そうそう、この先生がタモリさんと同じ高校の後輩ということで、その後もローカルトークで盛り上がってましたね。
松枝先生がタモリさんと石を確認していた場所は、小樽の水天宮の社殿へと上る階段があったところで、余談ですが、実は最近この階段が壊れたままになっていて、上れないんですよね。
で、壊れた階段の下で採種していた石は、流紋岩質凝灰岩ということで、これは後にも出てきます。
で、すぐ先の右手に急に下る階段があって、その先には鳥居が見えます。
ここは小樽市民にはお馴染みの、花園公園通りから水天宮に向かうルートで、この鳥居をくぐって、急な階段を上って境内へ向かうという参道ですね(参道という感覚はあまりないかも)。
そして、水天宮の境内へは、階段の上からぐるっと左側にUターンするように迂回していきます。
タモリさんたちもお参りしてました、ここが水天宮の本殿ですね。
水天宮の建物や景色については触れなかったですが、水天宮の本殿、拝殿は大正8年(1919年)建築で小樽市指定歴史的建造物に指定されていて、境内からの小樽港の眺めがとてもいいんですよね。
(水天宮の境内からの小樽港の眺め)
※当ブログでは、水天宮関連の記事はカテゴリー「水天宮」にまとめてます。
さて、ここから本題ですが、今まで当たり前のように花園公園通りから鳥居をくぐって水天宮にきていたルートが、実は、小樽の町づくりと関わりがあるとは、私はこの放送を見るまで全く知りませんでした。
そのヒントは本殿と鳥居の向きが違うということ。
先ほどの鳥居からは、急な階段を上ってぐるりと迂回して社殿の正面にきたのですが、確かに向きが違う…。これまで、全然疑問を持ってませんでした。
で、社殿正面から境内を出て、そのまま真っすぐ進むと、やや左手にも階段に続く急な坂道があるのですが、実はその坂道こそが本来の水天宮の参道だったとのことで、いや〜、知りませんでした。
(この入船町方面に下る坂道が、かつての参道だったとは)
この坂道は、入船町方面へと下る坂道で、このブログでも取り上げたことがあるんですが(こちらの記事:入船町側から水天宮に上る急な坂)、無茶苦茶急です。
この参道が変わった理由というのが、町の中心部が変わったせいということなんですね(タモリさんはこの理由も先に当ててましたね)。
(この先が境内。この写真の反対側に先ほどの坂道があります)
かつての小樽の中心は、勝納川の河口や昔あった入船川の河口付近だったのが、徐々に北側の色内、稲穂町へと中心部が変わってきて、それに加えて、海から内陸部の花園町へと町は広がっていったんですね(参考:小樽市 : おたる坂まち散歩 第27話 山ノ上の坂(前編) (やまのうえのさか)、及び小冊子「花銀昭和散歩」(平成26年10月発行)の花銀偉人伝より)。
その新しい町づくりを地形から確認するために、タモリさんたちは水天宮から鳥居のある通りを下っていきました。
(鳥居を過ぎてから振り返ったところ。この写真は2015年10月撮影)
町の中心部を作る〜花園町
そして、やってきたのが、水天宮の鳥居に続く通りの花園銀座商店街の端の交差点でした。
ここでナレーターの草彅くんの言った“小樽の中心部にやってきました”という言葉がちょっと寂しかったですね(このあたりは最近は人通りが少なく寂しいんです…)。
(交差点から右手の花園銀座商店街)
そして、ここで登場したのが、10m以上ある尾根を削っている最中の明治の写真でした。私はこれはたぶん初めて見ました。
見ている方向は花園公園通りですが、ここ花園町周辺は元々もっと高い尾根だったんですね。削られた尾根は、高いところでは10m以上で、長さは600m以上にもなるとか。
番組の説明によると、花園公園通りの奥の信号から、水天宮の鳥居の下あたりまでを、ごっそり削ったということです。
ちなみに、この花園公園通りの奥の信号から先は急な上り坂になってますが、その上は小樽公園になります。そちらから水天宮側を見ると、こういう眺めです。
(2015年7月撮影。小樽公園下から見た花園公園通り)
いや〜、花園公園通りはそうやって削られてできた通りで、その周辺はそうやってできた町なんだ(明治30年ころから町ができ始めたようです)。それにしても、今でも起伏が多く、坂道ばかりの小樽の街ですが、昔はもっと高低差があったということですね。
さて、この後タモリさんたちは、当時の町づくりの痕跡として、あまりに町が急速に発展したので、尾根を削るのを待てずに高台に家を建ててしまったために今も残る、尾根の削り残しを見に行きました。
これ、ブラタモリの番組ディレクターが、下調べで歩き回った際に見つけたそうです。凄いですね。このことは、2015年11月11日付の北海道新聞朝刊小樽・後志欄にも掲載されていました。
(交差点のこの先にあります)
先ほどの交差点からすぐ近くの、駐車場に入った脇に、その尾根の削り残しの高台があり、私も実際に見に行ったのですが、本当にポツンと高台が残っているんですよね。
(矢印の場所を入っていきます)
ただ、ここは周辺が個人所有地のようなので、今回写真の掲載は控えておきます。気になる方は、見に行ってみてください。
番組では、その高台から落ちてきた土の地質を見てましたが、水天宮の近くで見た流紋岩質凝灰岩と同じで、この地質は、崩しやすく工事がやりやすかったんですね。そして、崩した尾根の土は、海岸沿いの埋め立て用に使われたというわけです。
小樽の最盛期に迫る〜銀行の集まる交差点
さて、シーンが変わって、タモリさんたちはかつての小樽の繁栄の最盛期を象徴する場所、色内大通りと日銀通りの交差点にきました。
(交差点のパノラマ写真。2012年9月撮影)
まず、番組では、タモリさんへの説明として、交差点それぞれにホテル、観光ショップ、工場が建っているという話のみして、その中から雰囲気のあるホテルへ入っていきました。
中に入ったタモリさんは、ここでもこの建物をもとは銀行建築って、即正解を出してしまいましたね。さすがです。
ここは、大正12年(1923年)建築の旧北海道拓殖銀行小樽支店の建物で、現在はホテルヴィブラントオタルとして営業しています。
ここで、桑子アナが“拓銀”を知らなかったというのは、何とも時代の流れを感じさせます、
改めてここの交差点ですが、この拓銀の他に、先ほど観光ショップといっていたのが、大正11年(1922年)建築の旧三菱銀行小樽支店(現 小樽運河ターミナル)で、工場といっていたのが、大正13年(1924年)建築の旧第一銀行小樽支店(現 (株)トップジェント・ファッション・コア)です。
旧三菱銀行小樽支店(現 小樽運河ターミナル)
旧第一銀行小樽支店(現 (株)トップジェント・ファッション・コア)
いずれも小樽市指定歴史的建造物に指定されていて、ここはとても歴史を感じさせる交差点なんですよね。
さらに、この交差点から山側の通り沿いには、「日本銀行旧小樽支店 金融資料館」も建っていて、その通りは日銀通りとも呼ばれてますね。
(日銀通り)
(日本銀行旧小樽支店 金融資料館。2015年4月撮影)
ちなみに、タモリさんたちが最初に交差点で背にしていたもうひとつの角の建物は、地元で本局と呼ばれる小樽郵便局で、建物は周囲の景観に合わせてます。
(小樽郵便局。余談ですが、最近まで壁を工事してました)
ということで、この辺りはかつて銀行だった建物が多く残っているのですが、大正13年(1924年)には、小樽には25の銀行が営業していたとのことで、本当に当時は経済都市として大変な繁栄を見せていたんですね。
そうそう、ここ一帯でコマーシャル的によく使われる「北のウォール街」というフレーズは、さすがにNHKは使いませんでしたね。
さて、何故、これらの古い建物が、壊されずに今も残っているのか。ここで今回のテーマ「観光地・小樽 発展の秘密は「衰退」にあり?」と繋がるんですが、タモリさんはもう分かったようです。
小樽の衰退をひもとく場所〜旧三井銀行小樽支店
いよいよ衰退の時(って、何だかタモリさんは嬉しそうでしたが)、ということで向かったのは、先ほどの交差点からすぐ近くの色内大通り沿いに建つ、昭和2年(1927年)建築の旧三井銀行小樽支店でした。
実は私はここには入ったことがないんです。現在の所有は、テレビでは製菓会社としか言いませんでしたが、「白い恋人」の石屋製菓の所有となっていて、普段は非公開なんですよね。
今回の放送で初めて建物内を見ましたが、営業していた当時の銀行そのままの状態で残っていて、すんごい雰囲気がある内装でしたね(いや〜、実際に中に入ってみたいです)。
ここで、歴代の銀行名の看板が出てきました。
三井銀行小樽支店(明治13年に出店)→帝国銀行小樽支店→三井銀行小樽支店→太陽神戸三井銀行→さくら銀行、と並びましたが、あれ?最後は三井住友銀行小樽支店でなかったかな。
その三井住友銀行小樽支店は、小樽最後の都市銀行だったのですが。平成14年(2002年)についに撤退し、これで小樽から都市銀行はなくなってしまいました。
かつて25の銀行があったのが、現在はたったの3つ。その3つとは、番組では言いませんでしたが、北洋銀行、北海道銀行、北陸銀行です。
その原因こそが、戦後に訪れた小樽の急激な衰退にあったんですね(ここから小樽の急激な衰退の話になります)。
ニシンは昭和30年頃に姿を消し、石炭は昭和35年頃から石油の時代へ、海運も昭和40年頃からは苫小牧の太平洋ルートが主流になってと、小樽を支えていた産業自体が、短期間のうちになくなってしまったんですね。
急激な発展の後に急激な衰退が訪れ、目的を失ったまま、最盛期に作られた建物が、当時のまま残ってしまった。「残した」という積極的な理由ではなく「残ってしまった」。
以下は、タモリさんの言葉です。
“次の人が何かに使うか、土地を買って建て替えるか”
“それが両方ないと、そのまま残っちゃう”
“壊すのもけっこう費用がかかりますからね”
で、衰退の一途を辿って、何とかしたいともがこうとしている時期に、小樽にきたタモリさんが発したのが、「この町には何もない」という発言で、そのころは本当に、“さびれていった 小樽”、“取り残された街 小樽”だったんですね。
しかし、あることがきっかけで、小樽に残る古い倉庫や銀行を観光目的として再利用していこうという動きが始まります。ということで、最後にそのきっかけとなった場所に向かいます。
観光地・小樽の誕生〜北運河
向かった場所は、運河にかかる龍宮橋でした。
(写真に写っているのが龍宮橋。2015年9月撮影)
運河と言っても、観光客で賑わう場所からちょっと北側の離れた場所に架かる橋で、このすぐ横には小樽市指定歴史的建造物の北海製罐の第3倉庫が建ってます。番組内でもちらっと見えましたね。
ここからさらに北側の運河を「北運河」と呼ぶんですが、昔の面影を残すこの北運河周辺は、とてもいい場所なんですよね(あまり人はいませんが)。
この先に、観光地・小樽が誕生した痕跡があるということで、タモリさんたちは北運河沿いを歩きます。
(この写真は2015年9月撮影)
で、その痕跡というのが、運河の幅。
(この写真は2014年4月撮影)
北運河と呼ばれるエリアは、その幅が40mと昔のままなんですよね。
(この写真は2011年6月撮影。北運河の端から見たところ)
で、普段、観光客で賑わうあたりは、幅が埋め立てられて狭くなってるんです。
昭和40年頃、運河を埋め立て道路を作る計画が上がり、これに対して昭和48年頃から市民の間で反対運動が始まり、運河大論争へとなっていきました。
結果、運河の半分を埋め立てて道路を作る折衷案が採用され、昭和61年(1986年)に工事が終了して遊歩道が完成したのですが、その時整備された遊歩道と運河が、今や小樽の観光の象徴となる場所になっているんですね(参考:小樽市 : 小樽運河)。
(2015年7月撮影)
ちなみに、タモリさんが小樽博覧会に来たのは昭和59年(1984年)なので、タモリさんが“小樽には何もない”といったのは、その通りだったんですね(前編参照)。
古い倉庫や建物などの残されたものをどうやって活用していくかと考えながらやってきて、現在の観光地・小樽が誕生したんですね。
タモリさん曰く、“急速に衰退すると、なすすべもなく残っちゃうんですね。残したんではなく、残っちゃう。”
そして、以下のタモリさんの言葉で、番組は終了です。
“急速冷凍の方が 鮮度を保つ”
“どうせ衰退するなら 急速に衰退した方がいい”
“衰退があったから 今の小樽の観光都市がある”
感想
いや〜、無茶苦茶面白かったです。放送前から相当期待していたのですが、その期待以上でした。
観光地巡りや寿しグルメといった、よくある小樽案内とは全く別の、現在の観光地・小樽の誕生の秘密を町を歩くことによって紹介してくれた今回のブラタモリは、本当に面白く、そして興味深かったです。
私もまだまだ知らない小樽があって、ますます小樽が好きになりました。
そうそう、坂や鉄道好きのタモリさんには、是非、坂の街でもある小樽のあちこちの坂や、旧手宮線の鉄道跡なんかも巡ってもらいたいですね。
※番組の足跡マップはこちら。
#23 小樽 観光地・小樽発展の秘密は『衰退』にあり? | タモリのブラブラ足跡マップ | ブラタモリ - NHK
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