
花園の飲み屋が集まる嵐山通り沿いに、以前から気になる建物があるんです。
嵐山通りの途中にあるその建物は「嵐山ビル」という建物で、一見、複数の飲食店が入る、この一帯によくある雑居ビルのように見えるのですが、見上げると、なんだか正面の建物外観とは似つかわしくない、和風の趣ある屋根が見えるんです。

建物横にはなんとも味わい深い、お店の名前が並ぶ門というかアーチというかがあり、そこから建物の横の小路に入っていきます。

(このアーチが本当に渋い)

すると、その横の小路沿いに嵐山ビルに入るお店が並んでいて、これまたなんとも渋い光景なのですが、ここでも見上げると、窓が印象的な木造のとても味わい深い作りの建物の様子を見ることができ、なるほど、これが先ほど正面から見た和風の屋根とつながる建物部分になるんですね。


で、この建物は元々なんだったんだろうと思っていたら、これ、かつては「松島屋」という老舗の料亭だったそうで、このことはつい最近知ることができたんです。
それは、私も連載を持たせてもらっている月刊フリーペーパー「小樽チャンネルマガジン2023年10月号(Vol.95)」(編集発行:株式会社K2)内の「小樽れっけん」という連載コーナーで、「旧松島屋(嵐山ビル)」として紹介されていました。
もう、この記事を見たときはびっくりしましたが、この「小樽れっけん」は小樽商科大学の高野宏康さん(小樽商科大学グローカル戦略推進センター学術研究員)によるもので、建物の歴史的背景や関わった人物などについて、丁寧な取材に基づいて興味深く紹介されていて、とても面白くて私も毎回楽しみに、そして、参考にさせていただいているんです。
で、せっかくですので、この旧松島屋(嵐山ビル)の建物について、小樽チャンネルマガジンの小樽れっけんの記事を参照させていただき、紹介しようと思います(内容はほぼ要約となるのでご了承を)。
※小樽チャンネルマガジン「小樽れっけん」旧松島屋(嵐山ビル)の記事はこちらで読めます。
・小樽チャンネルマガジン2023年10月号
旧松島屋(嵐山ビル)

嵐山通り沿いの現在、嵐山ビルという名称の建物は、明治末期から昭和初期まで営業していた料亭「松島屋」を改装したものだそうです。
松島屋は明治40年頃、宮城県石巻市渡波町から小樽へ来た阿部嘉蔵が開業した料亭で、当時は有力な老舗料亭だったそうです。その頃、小樽にはとても多くの料亭があったんですよね。
松島屋はうなぎ料理が名物だったそうで、私は知らないのですが、小樽を代表するうなぎ料理店として有名だった「新松島」は系列のお店だったそうです(松島屋2代目を継いだ嘉蔵の次男・藤作の兄・市蔵の息子・阿部源市が経営)。
昭和11年に、現在見られる木造の建物を新築。当時小樽は木材が豊富で、松島屋の新築にあたっても、数々の銘木が惜しみなく使用されているそうです。

昭和28年に女将を務めていた2代目藤作の妻・きゑが亡くなると、長女・精子が女将を継ぎます。その後、昭和31年に松島屋は閉店したとのことです。
昭和38年に市内の家具店・渡部商店が松島屋の建物を購入して店舗として活用。家具店時代は1階のみを改装して使用していたそうです。
昭和51年に前面のみを雑居ビル風に改装して「嵐山ビル」と命名し、1階全体を飲み屋、2階を家具店の倉庫としたそうで、1990年代はじめ頃には12軒ほどのテナントが入って賑わっていたそうですよ。

建物の反対側は、JRの高架沿いの通りに面してます。
(旧花園高架下商店街の建物が解体されため、反対側から建物裏側を眺めてみました)


こちらは近くの歩道橋の上から。和風の屋根だけが見えます。

かつて小樽にあった料亭は、昭和初期には次々と閉店していったとのことで、小樽の料亭建築といえば、海陽亭(旧魁陽亭)や旧光亭が知られてますが、この繁華街の中にひっそりと残る旧松島屋の建物も、小樽の料亭の繁栄を今に伝える、貴重な歴史的建造物なんですね。
※参照:小樽チャンネルマガジン2023年10月号(小樽れっけん「旧松島屋(嵐山ビル)」)
おわりに
いや〜、ということで、気になっていた嵐山通りの嵐山ビルが、かつて松島屋という料亭の建物だったということを知ることができました。
こういったところに、歴史的にも貴重な建物が現役で残っているというのも、小樽らしいかもしれませんね。
※高野先生、今回もとても深い取材で、貴重な情報をどうもありがとうございました。
※ちなみに嵐山通りは、山側は国道5号線を越えて、その先の小樽図書館まで続く通りになります。
※小樽のフリーペーパー「小樽チャンネルマガジン」 | 小樽チャンネル
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・建物の解体工事中の旧花園高架下商店街はすでに橋脚が並ぶだけの姿になってました
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